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高校サッカーには、自分の原点がある!2014年1月15日

今年の6月、サッカー界にはビックイベントが待っている。「2014FIFAワールドカップブラジル大会」だ。
世界の誰もが熱狂するサッカーの祭典が楽しみでならない。日本代表が世界とどこまで戦えるのか
期待で胸が膨らむ。
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年末年始は、‘仕事納め’も‘初仕事’も、「全国高校サッカー選手権大会」の中継で年をまたいだ。
担当したのは、埼玉スタジアムで行われた1,2回戦の合計4試合。その中には、激闘の末に初優勝を遂げた
富山第一高校の2回戦の試合もあったが、まさかその時点で富山第一が優勝するとは思わなかった。
それくらい、どこが優勝するのか予想できないのが、高校サッカーなのだ。
この仕事に携わって、早いもので今年で10年が経つ。年末年始に仕事はちょっと…と思うかもしれないが、
10年も続けていると、この仕事をしないと年が越せないし新年も迎えた気分にならなくなってきた。
埼玉スタジアム

埼玉スタジアム

中継車の内部

中継車の内部

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中継の中で私が担当しているのは「スローオペレーター」である。
「スローオペレーター」とは、カメラマン、音声マン、CG担当など中継におけるパーツの一つで、
その名の通り、もう一度観たいシーンのスローリプレイを出す役割。
特にスローは、スポーツ中継の中でも大事なパーツである。
一瞬のプレー、得点シーンなど、「今のプレーをもう一度みたい!」という視聴者の思いを、
スローリプレイで満足させなければならない重要な役割なのだ。
毎年、年末年始にかけて行われるこの大会は、高校のサッカー部では集大成の大会。
選手たちは、あこがれの聖地・国立でプレーすることを夢見て、ボールを必死に追いかけている。
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実は、私もそんな一人の高校生だった。
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私は、静岡の清水市出身(現静岡市清水区)。父親がサッカーをしていたこともあって、3歳からボールを蹴り
出した。私が生まれ育った当時の清水は、全国でもサッカーが盛んな街として有名で、高校サッカーの強豪
といえば藤枝東、清水商、清水東など静岡の高校だった。私も幼少の頃から高校サッカーにあこがれていた。
そんな中、強豪校の一つでもあった「東海大学第一高校」のサッカー部に入部。
私が入学する前は、県の決勝までいったことはあったが優勝したことはなかった。そして私が入学してからの
3年間、チームはすべて県の決勝へ進出したが2年までは決勝で敗れ、「東海第一は勝てない」とまで言われた。
しかし、自分たちの代が最上級生になった3年時にようやく静岡を制し、初の全国大会へ出場することができた。
私はレギュラーではなかったが、チームは安定した戦いぶりを見せ、準決勝までの4試合をすべて3-0で
勝ち上がった。
初出場同士・国見高校との決勝でも相手を無失点に抑え、2-0と勝利。初出場初優勝しかも無失点という、
今でも破られていない快挙を成し遂げた。
私にとって高校時代のサッカーは、つらかった思い出と同時にかけがえのない最高の経験となった。
私はそのときから、プレーヤーとしてトップ選手で続けることができないならば、将来はテレビの世界に入り、
‘サッカーの魅力や楽しさ’を伝えたいと思い始めた。
優勝トロフィーを手にする 高校3年時の自分

優勝トロフィーを手にする
高校3年時の自分

地元の新聞に載った (3年生部員全員)

地元の新聞に載った
(3年生部員全員)

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そして大学卒業後、入社してまもなくの1993年にJリーグが開幕。
私は本当に運良くJリーグの中継に携わることができた。以降、民放やCSなどの放送を経て、
現在はNHKのJリーグや天皇杯の中継ディレクターを担当させていただいている。
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サッカー中継のディレクターとは、簡単にいうと、いかにその試合を面白く、わかりやすく見せられるか、
ということになる。もう少し具体的に言うと、その試合の見どころはどこなのか、どの選手が注目なのか、
試合の流れはどうなっているのか、今のプレーはどんなところがスゴイのか、そしてディレクターとして
どう見せたいのか、などを実況と解説のコメントと時にはリンクさせながら伝えていかなければならない。
その部分をカメラマン、スローオペレーター、音声マンなどの各スタッフとコミュニケーションを取りながら、
指示を出していかなければならない。しかし、ご存じの通りサッカーは止まることのないスポーツなので、
その一瞬を逃してしまうと、シーンはどんどん逃げていってしまう。

私はこれまで20年、100試合以上のサッカー中継をディレクターとして担当してきたが、
その中で、完璧な中継ができたことは一度もない。それほど難しいのだ。
カメラマンやスローオペレーターといかにコミュニケーションをとりながら息を合わせるかということが
ポイントだが、私が今撮りたい選手がいても、カメラマンが撮っていなければテイクできなし、
私が今のプレーをもう一度見せたいと思っても、スローオペレーターがそのシーンの頭出しをしていなければ
見せることができないのだ。だから、これからも完璧と思える中継はできないと思っている。
EVSコントローラー

EVSコントローラー

EVSコントローラーを操る自分

EVSコントローラーを操る自分

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ここ10年ほどでスローの機器も進化し、現在スポーツ中継の現場ではEVSという機器(デジタル)を多く
使用している。これは、以前までのテープ(アナログ)スローとは違い、常に映像を収録(何時間も)しながら、
映像を瞬時に戻し、リプレイとして出すことのできる優れもので、さらには、シーンをクリップ(撮っておきたい
シーンをシーンごとに残しておくことができる)することで、試合のハイライトや番組の最後に紹介するエンド
VTRもいとも簡単に編集できるというものだ。このEVSという機器はスポーツ中継にとってとてつもなく
画期的な機器と言えるのだ。
私は、そんな機器を扱いながら、高校生たちがボールにかける思いのこもったプレーーや表情を、
どうしたら伝えることができるのか。いつもそこを考えながら、スローオペレーターというパーツとして、
高校サッカーの中継に臨んでいる。
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現在の国立競技場で行われる最後の大会は富山第一の初優勝で幕を閉じたが、
今大会に出場した選手の中から、きっと将来の日本を背負って立つ選手が現れるだろう。
20数年前に高校サッカーを経験した者として、それを期待せずにはいられない。
そして、これからも、日本のサッカーの発展の為に少しでも貢献できるよう、
楽しく魅力のあるサッカー中継に臨んでいきたいと思う。
end
遠藤幸夫
プロデューサー&ディレクター 業界歴24年 生涯サッカー小僧!