「妄想力」
突然ですが、質問です。
水族館の水槽に、イワシの大群を見たとして、どう、思いますか?
「美味しそう!」「気持ちよさそう」という人、多いでしょうか。
私はいつも「かわいそうに。あんなに群れて」と思い、きゅんとします。
きっと、大きな魚におびえているのです・・・
水槽の中なのに、大海原にいると錯覚して・・・。
魚だって、機械的に泳いでいるわけではありません。
じっと見ていると、心があるのでは・・・と思うこともあります。
それも、かなり、繊細な心が。
今回は、「妄想力」の話をしてみます。

水族館でよく見るイワシだんご
現在、NHK総合「さわやか自然百景」という番組の、
お正月特番の制作まっただなかです。
日本各地の自然と、生きものたちの営みを見つめる番組。
生きものは喋らないので、おのずとナレーションが中心になります。
番組の長さは88分。長い。
生態や環境の話ばかり聞いていたら、飽きちゃいます。
しかも、見るのはお正月の朝。くつろぎの時間です。
そのため、くふうが必要です。
今回は、全体を4つの章にわけ、各々にテーマとなる生態を決めました。
さらに章の中でも、いくつかのバリエーション項目を展開します。
1つの項目につき、生きものの動きを観察し、
全体の流れを整理し、物語を仕立てます。
ざっくりと書きましたが、かなりの想像力と表現力を要しました。
たとえばです。「繁殖」をテーマにした章で、
今回、辛くも予選落ちした項目を挙げてみます。
流れの緩やかな清流を好む、トミヨという、ちょっと地味な魚がいます。
トミヨのオスは繁殖期、なわばりをかまえます。
オスは、水草をちぎって集め、メスを呼ぶための巣を作ります。

トミヨ。全長2~3センチほど
・・・で?って、思ったらだめ!アウト!試合終了です!!
ここで、感情移入できるかどうかが、第一のポイント。
器用だなー!健気だなー!と感動できないと、番組にはなりません。
そして再度、映像を見なおします。
すると、見えてくるんです。
出来るだけきれいな水草を選りすぐって、巣材にすること。
5ミリほどしかないヒレで、懸命に、巣をまんまるに整えること。
別のオスがやってくると、猛スピードで追い立てること。しかも必死の形相。
トミヨにとって、
命をつなぐことが一世一代の大仕事なのだと、伝わってくるのです。

バイカモ
さらに、トミヨが棲むところにはよく、バイカモという水草が生えています。
漢字だと、「梅花藻」。梅に似た、白い可憐な花を咲かせます。
ここで「キレイだなー」で終わらせないのが、第二のポイント。
水面に点々と咲く花・・・良い!ロマンチック!
ということで、最終的に、
「お花畑で健気な恋をする魚・トミヨ」で物語をつむぐことになる。
ここまでくるのに、先輩ディレクターのお知恵を、だいぶ拝借しています。
最大のポイントは、これを擬人化せず、シンプルに描くこと。
ストーリーはあくまで裏にあるもの、
伝えるべきは、生きものたちの営みです。
労い、手向け、さまざまな意図をナレーションの裏に隠します。
何かを面白く伝えるには、妄想力が欠かせません。
が、私にはまだまだ、むずかしいです。
こんど水族館に行ったら、想像してみてください。
「魚=食べもの(人目線)」ではなく、
「 =追い、追われるもの(魚目線)」で。
それぞれに個性があふれでて、命のドラマにわくわくしますよ!
今回のロケでは、沖縄の海やら、山奥の崖やら、色々行きました。
特に崖は、本当に楽しかった!さて、何しに崖へいったのか?
1月4日(日)あさ7時20分~ NHK総合で、ぜひ、ご覧ください!

沖縄・座間味島の砂浜にて
まきたまりこ
魚マニアではないです。本当はふわふわの動物が好きです。