今回、全てのCG制作と合成を受け持ってくれたのは旧知のCG制作会社「エフェクト」である。
社長の永峰智さんは10年以上前、NHKの伝説的宇宙番組「銀河宇宙オデッセイ」の制作に関わり、その後「エフェクト」を立ち上げた。以来、NHKの宇宙ものには必ず参加してきたが、最近NHKの宇宙番組が少なくなり、実力が発揮できず鬱々としたものがあったという。そこで、今回の番組ではコンペに提案する企画段階から参加してくれた。
実は44分ある番組時間でCGが関わっていないシーンはどこか探すのが大変なほど「CGだらけ」である。そのクオリティーは驚異的な高さで、お支払いできた金額の何倍に相当する労力を払ったのかと思うほどで、「足を向けては寝られない」とはこのことである。
やってみてわかったのは想像以上にCG制作は時間がかかるものだということである。CG制作は簡単にいうと「どんな絵」を「どんなカメラワークで」と「どんな照明をあて(これが大事)」、「どう動かすか」決めてゆく作業である。優れたCGクリエーターといっても、監督がこうした絵作りをなんにも考えていなければ、何も生まれてこない。
試しに作るというのは労力の無駄遣いでしかないので、やはり、絵コンテと動きの秒数を出すことが監督の仕事だ。実写の撮影を終えて再び、孤独な編集作業である。CG場面が続くところでは、想像でCGシーンの秒数を出し、「ダンテ急降下、星の卵に突入」などと、シーンに必要なことをテロップでうったダミーカットを作って編集した。
そして、CGクリエーターは脚本と、私の落書きのような絵を見ながら割り出した秒数を元に動きを作り、番組の前半から映像を埋めていく。
そうしてできたものを、毎週試写した。検討して直しをしつつ、新しいシーンのCGも作るという過酷な制作だった。実質的には2人のCGクリエーターが3ヶ月かかりきりで、目をつむっても「ダンテが見える」というくらい苛烈な状況の中で仕事をしてくださった。感謝してもしきれない。
そして天体現象のCGではきわめて重要な役割を担った方がいる。早稲田大学の坂井滋和教授である。坂井先生は長年NHKの宇宙番組で天体CGの制作を支えてきたCG界の大御所である。エフェクトの永峰さんと深い付き合いがあり、私の番組でも力を貸していただいた。坂井先生のすごいところは天体現象を映像化するために、シチュエーションごとに専用プログラムを作ることである。その一例として星が誕生するときに発生する双極分子流のCGなどは竜巻のような部分、中心から立ち上る光の柱、そして渦を巻く星間物質などを個別に作成し、専用ソフトで一斉に動かすのである。これは圧巻の一言だった。
この番組は架空の設定とはいえ科学番組なので、専門家の監修を受けている。
今回、監修を引き受けてくださったのは、国立天文台で星の誕生する過程を研究対象としている長谷川哲夫教授である。長谷川先生はかつて新聞に宇宙を旅する視点で星や銀河の成り立ちやしくみを解説するコラムを連載していたことがあり、マスコミを良く理解していらっしゃる方だった。番組の筋書きを決める段階からアドバイスをいただき、CGの色使い、天体の形状、動きについても非常に丁寧に指導をしていただいた。かなり細かい注文もあったが、エフェクトの皆さんの執念とも言えるがんばりもあって「この手の天体CGのスタンダードを築いた」とお墨付きをもらうまでに至った。
番組では細かい解説はしていないが、天体CGに描かれた動きや色は学術的に考証したもので、すぐれた内容に仕上がっている。今回の仕事で胸を張れるものの一つである。
長谷川先生は現在ALMA計画という巨大な電波望遠鏡群を南米に作る国際共同プロジェクトの責任者をなさっている。2012年に稼働する予定だが、その際は星の誕生の過程が、驚異的な映像として見えてくるという。大変楽しみだ。
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博士役を演じる石丸謙二郎さんの前にハッブル宇宙望遠鏡の姿が映し出される


これは星が誕生する様子を映像化したもので、竜巻きのような物は双極分子流という。このシーンの映像化は坂井教授のプログラム無くしては実現できなかった


一人前の星になる前の若い星「Tタウリ型星」の映像化は世界的にもあまり例が無いと思う




オリオン大星雲に突入するダンテ。星雲内部をあたかも飛行しているように再現した

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