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ふたたびの出会いをもとめ −新日本紀行ロケハン記−

今から30年ほど昔、NHKで「新日本紀行」という番組が放送されました。この番組は全国各地の風土や人の暮らしなどを紹介しながら、高度成長期を迎え著しい変化を受けた日本の姿を見つめたものです。
この番組は富田勲氏作曲のテーマ曲が有名となり、音楽を聴いただけで懐かしいと感じる熱狂的なファンが多い番組です。昭和40年代から50年代にかけて、700本あまりが放送された長寿番組でもありました。

この番組を主軸にして、新しい番組をつくろうというのが、今回私が手がけた「新日本紀行ふたたび」です。30年ほど前に「新日本紀行」として放送された地域をふたたび訪ね、地域や人々の暮らしの変化を見つめ、新しい日本の姿を表現しようというものです。

もちろん、変化の中には、豊かだった田園地帯が住宅地に変わる、大型店の出店で昔ながらの商店街が寂れる、農業に見切りをつけて若者が去っていく、といったものも多く、決して明るい話題ばかりではありません。しかし、あくまでこの番組は、急激な変化のなかで夢や希望を持って暮らす人々の生き様や、その地域ならではの良さを見つめ、視聴者の方々に日本の良さをお届けする番組です。

郷愁を誘う日本の原風景を探す!

番組づくりは、下見から始まります。今回、私が訪ねた場所は広島市から40キロほど内陸に入った安芸高田市です。かつては毛利元就の城下町として発展し、その後は広島と島根を結ぶ出雲街道沿いの宿場町としても栄えました。地域の山村の中心としての役割を持ち、商店街が発達した川沿いに開けた町です。

今回の番組で大切なのは郷愁を誘う風景です。コンクリートの水路、現代風の家屋が並ぶ農村。それは事実かもしれませんが、番組ではあくまで昔をしのばせる光景を見つけなければなりません。地図を頼りに風景を探します。取材した人にも、昔ながらの風景が残っている場所がないかを聞くことも手がかりの1つです。はじめての場所でわずかな手がかりを頼りに撮影ポイントを探すことも、番組制作の醍醐味の1つです。

安芸高田市の町並みとディレクターYの相棒となった取材犬「リサーチャー」号

町の中心を出ると、広い田んぼが広がります。かつては農業が盛んだったようですが、現在は米の値段が下がり、厳しいとのことでした。山間には棚田も築かれています。石を丁寧に積み上げた棚田からは、狭い土地を有効に使ってきた先人たちの苦労がしのばれました。こうした風景を見つけると、棚田を番組の中で生かせないかと考えるようになります。

さらに、取材する人も探します。過去の新日本紀行に出演しており、現在農業を熱心にしている人とか、地元で伝統を守っている人。一度は都会に出たが、ふるさとを忘れられなくて戻ってきて、地元ならではの仕事をしている人。あるいはもっと単純に、味のある人、親しみを感じる表情のある人とか、共感を呼ぶ話し方をする人とか……。出演者の方を探す視点は様々です。

そして、どんな番組になるかは、出演してくださる方々にかかっています。腰の曲がったおばあさんがわらぶき屋根の農家に暮らして、裏の棚田を耕し、天気の良い午後は縁側で近所の友達と、お皿にのった野沢菜をつつきながら、茶飲み話に花が咲く。でも実は、このおばあさんはかつての新日本紀行に出演していた、なんて話がないかと町中を探して回ります。もちろん、そんなに簡単には見つかりません。

偶然見つけた棚田に思いをよせる取材犬「リサーチャー」号

常に理想を胸にひた走る。ロケの下見は、理想の番組を求めて、夢や希望を追い続ける旅なのです。ディレクターは終わりのない旅を続けながら、番組をつくり続けます。それがディレクター業の一番の楽しみではないでしょうか。

夕日を背に新たな出会いを探す「リサーチャー」号
※この番組(「新日本紀行ふたたび 自画像の歳月〜広島県・吉田町〜」)は2005年4月16日にNHK総合テレビで放映されました。
 プロフィール
 吉田晋也
1匹の犬と2匹のネコと、100匹のミンミンゼミに匹敵する妻と暮らす一ディレクター。
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