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ハイビジョン特集「カヤック風と荒波の岬へ〜南米最南端61歳の挑戦〜」撮影後記
 今回は南米のチリ、最南端のケープホーンを回るカヤック隊を同行取材しました。出発は今年の正月早々の10日。ロスアンゼルス、ペルーのリマ、チリのサンチャゴへ。
 そして乗り継いでプンタアレナスという町へ。日本からおよそ48時間、地球を半周もした。正直少々疲れた。
 メンバーは、カヤックチームがこの冒険の立案者の元東大教授T氏、カヤックガイドのS氏、助手のAR氏とAS氏の4人。撮影チームは4人、僕とディレクターのI氏、録音のY氏、アルゼンチン在住のコーディネーターR氏。

 この町でカヤックの組み立て、食料等の買出しをする。広場にはマゼランの銅像があり、マゼラン海峡が目の前に広がる。白く波立っている。風のためにけが人が出て有名になった強風の吹きつける坂道もある。それほど風が強いところだ。
  船は船長と2人の船員、名は「ママディーナ号」、出来たばかりの新造船である。この船は大丈夫だろうな、と心配になる。カナダで以前、船が横倒しになった揚句に漂流、死にそうになった経緯が頭をよぎる。


 19日出発。氷河、ペンギン、イルカ、鳥類、パタゴニアの様々な風景を目にする。ほとんどフィヨルドを航行。快適な船の旅だが、太平洋に出たときは外洋なのでかなりの揺れを体験。ビーグル水道に面するプエルトウイリアムスに4日目に着いた。海軍基地の町であるここがカヤックの出発地。ホーン岬までは直線距離にして200Km。島づたいに進むので、300Kmの行程だ。進める距離は1日に最高30Km〜40Km、カヤックは少々の波でも風がなければ進める。進むか留まるかはガイドのS氏の判断が重要で、天気の読みが命取りになることもあるのだ。20kmから30kmある海峡を4、5時間かけて漕ぎわたることもあった。やはりベテランの経験、知識が最大限必要になる。

 島にはカヤックなら簡単に上陸できるが、沿岸には昆布のような海草が多く、ゴムボートではなかなか近づけない。テント生活の取材も困難だ。船員の生活が始まった。気候も真夏なのにめまぐるしく変わる。気温20度以上の日も多々あったが、冬のような日が大半であった。
  海上給油でホースが伸びきってしまったため、船の燃料を全身に浴びた。しかし暖かい日だったので水を浴びる。仕方ない、船には風呂もシャワーの設備もないのだ。風呂に入りたい、揺れないベッドで眠りたい。これが本音。


 風のため足止めをくっているカヤック隊の取材にと、島の反対側に上陸し、4時間半歩きつづけてやっとたどり着いたこともあった。
  ストレス解消は魚釣りと料理。鍋でご飯を炊き、みそ汁の具は海草。野菜炒め、スパゲッティ各種、ニンニクの醤油漬け(チリ人にも好評、特に船長はご満悦)、ニンニク揚げ、天ぷらまで揚げました。それに、サンサンと降り注ぐ太陽の下で育った葡萄から作られたチリワインは、美味しく最高!でした。


 今回は無事に終わることが出来ました。これはスタッフ、カヤックチーム、船長と船員たちのおかげです。本当にこれ以上ないと思われる、人間的にみんな良い人達で、良いチームでした。
  機械も文明もなく、お金があっても役に立たないそのような地で本当に何が必要か? 木を集め火を起こす、ナイフを使うなどの基本的なこと、人間が生きるために最低限必要な知識を持ち、それを実践できるかどうかが大事なことだと思いました。
  でも東京に帰ったとたんに機械、文明にどっぷりと浸かりきっています。


※この番組は2004年4月12日(月)、NHK衛星ハイビジョンで20:00〜22:00に放映されました。

 プロフィール
 渡辺 忍
 コックになりそこなった甘党カメラマン。
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